元々宇宙関係をやりたくて工学部志望で浪人していました。その時に予備校でAO入試(現・総合Ⅱ)を勧められました。元々九工大が宇宙系に強いことは知っていたのと、宇宙システム工学科に進まなくても学生プロジェクトなどに参加できることもあり、受験することを決心しました。
まず、5類に入ってみると、私よりも遙かに宇宙工学に対して強い意思をもって勉学に取り組む同級生がたくさんいました。私にはその人たち程の情熱を持つことができませんでした。ですが、大学の授業を通して、自分の視点が広がりました。例えばロケット一つとっても機械工学・電気工学・材料工学など様々な工学分野が複雑に絡み合っています。つまり、技術者として宇宙に関わる選択肢として、宇宙システム工学科に進まずに、材料を専門とする技術者になるというのも一つの道だと考えたのです。「自分の強みは何だろう」ということを考えた結果、あえて他の人が選ばないような道を究めていって、強みを伸ばしたかったのでマテリアル工学科を選びました。
最初は自分もそれほど興味はなかったのですが、横山先生の講義で金属材料の歴史や産業における重要性を知ることで、興味を持ちました。あと、マテリアル工学科は他学科に比べると、量子力学などの比較的基礎的な科目を多く学べるので、工学部と理学部で迷っているという人にもお勧めかもしれないです。
また、就職活動中に聞いたのですが、材料系の部門はどこの企業にでもある一方で、学んでいる学生の人数が少ないそうです。世間ではよく「電気系が就職に強い」といわれていますが、材料系も自動車業界・宇宙業界・半導体業界・材料業界など様々な業界で、金属・半導体・セラミックを学んだマテリアル工学科出身者のような人材を企業から強く求められています。ある意味で「お得な学科である」といえると思います。
マテリアル工学科は他の学科に比べていきなり難しくなったりする科目が少なかったり、製図や実験といった科目が他学科ほど大変ではないため、友達と教えあったりして、勉強であまり困った覚えがありません。しいて言えば1年のコロナ禍でオンライン授業となったプログラミング系の授業で人に聞けなくて苦労しました。コロナによる規制がある程度緩和されてからは色々なところに顔を出して自分にあう友人が作れたのが今思えばよかったのかなと思います。
宇宙系のサークルを見学したり、OB訪問をしたりしている中で、就職活動を始める頃には宇宙への情熱よりも、身近にある製品に関わりたいと思うようになりました。その中で社会的インパクトが強い製品を扱っている企業を探していたところ、トヨタ自動車の自動車開発系の部門に採用されました。大学で材料系を学んでいたことに加えて、2年生の秋に自分で企業との交渉などしながらYouTubeチャンネルを運営した経験なども評価されたと思います。
一人暮らしになりましたが、ちょうど入学時にコロナ禍と重なって友達もなかなかできなくて寂しかったのを覚えています。あとは高校の先輩に誘われて軟式野球部では副部長兼企画係を務めました。週に1回程度の部活でしたが、割と運動不足になりがちだった中で、適度に動いていたので気分転換にもよかったと思います。
またタイのキングモンクット工科大学での2週間の研修では大学の寮に泊まってプログラミングや画像認識について学習しました。初めての海外経験で、自分の英語力の未熟さに直面することで、英語学習のモチベーションが上がりました。今でも、SNSでつながった現地の友人とのコミュニケーションを楽しんでいます。
最初は慣れない一人暮らしでしたが生協のミールカード(生協食堂の年間利用定期券)には助けられました。自炊に不安がある人は最初の1年は契約したほうがいいかもしれません。
また、横のつながり・縦のつながりを作れるように、色々なところに顔を出して自分にあうコミュニティを見つけられるといいと思います。その一方で、進級などで状況は変わるのです。高校までは続けることが美徳とされることも多いですが、周りの人見ていると続けていることをやめる勇気も大事だと思います。大学入学時とやりたいことが変わることも悪いことではない、むしろいいことだと思います。色々なものや人に触れることで、自分の道を見つける、そんな大学生活を皆さんには過ごして欲しいです。